データ分析の書記録

読んだ本の内容って忘れてしまいますよね。このブログは分析関係の読んだ本、勉強したことの記録です。

データ分析者が思う「問題解決のジレンマ」その4 〜上位概念の思考法〜

はじめに

前回のはなし

shinomiya-note.hatenablog.com

問題定義と問題解決

前回、問題を解くためには軸を固定して「問題である」「問題でない」を区別しなければいけないと述べました。あらためて「問題を定義/発見すること」「問題を解決すること」はどう違うか考えます。

以下のようにまとめました。

問題発見 問題解決
白紙の上に「問題という枠」を定義  「決められた枠」の最適化 
上流工程 下流工程
指標・変数の創造 指標・変数の最適化
知らないことを利用する 既存の知識を用いる
why → what what → how
上位概念の思考(キリギリス型) 下位概念の思考(アリ型)

問題発見のためには上位概念の思考で考えることが必要です。

上位概念とは

そもそも上位概念とはなんでしょうか。著者は「個々の事実から新たな知見を生み出すための思考に用いるレイヤー(層)」としています。

上位概念 下位概念
メタ ベース
思考の軸 個別事象
関係性/構造 個別事象
抽象 具体
目的 手段
全体 部分

問題発見に必要なのは、上位概念での無知を認識した上で、新たな線引きを行うことです。

上位概念で考えるとは俯瞰して考えること(メタ思考)

上位概念の思考とは端的に言い換えると「客観的に見ること、考えること」以外のなにものでもありません。自分の認知している知識や常識の壁がどこにあるかを客観的に認識することです。

次元をあげるメタ思考法

では超具体的にその思考方法を挙げていきます。

抽象化・アナロジー

抽象化とは個別の事象(具体)の「特徴を抽出」「分類」し、個々の事象の「関係性」や「構造」で捉えることです。 そして得られた抽象化レベルでの特徴や関係性を類似の抽象化物と比較することで、既知の範囲ではなく未知の領域から創造性を得たり問題を発見できるとしています。*1抽象化すると言うことは特徴や関係性で物事を捉えるため、ビジネス上の非常に広い範囲で物事を比較できます。要は似てればよいわけなので。 抽象化して問題を上位概念で発見/定義した後は、逆に具体に下げ実行レベルで行うことを挙げ問題の解決につなげていく*2、という上下の流れが問題発見→解決には不可欠としています。 よく分析の作業ではビジネス案件の枝葉の話ではなく本質が何なのかを初期に考えます。まさに本質とはこの抽象化したモノと言えるでしょう。

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抽象化による思考の動きのポイント
  • 「目的→手段→目的」、「全体→部分→全体」など「具体↔️抽象」の上下往復を繰り返す

  • 抽象化して考える = 構造や関係性を捉える(分類する) ← 軸を検討する、whyを突き詰める

思考の「軸」

今までも述べてきた「個別の事象や事実を解釈するための視点や変数」が軸です。たとえば「大きさ」「価格」などがあたります。思考の軸を考える上では数学で言うところの座標軸をイメージするとわかりやすいです。視点の軸を持って抽象化(分類)を行うことの利点は網羅性が保証されることにあります(下図)。

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座標軸上で視点軸を持つこととは、軸上の対極である対立している環境や条件をそれぞれ考えることになります。また複数の軸自体を対立させて考えれば、より多次元的になり検討や思考の多様性が広がることになります。ビジネス用にまとめられたその最たるものがフレームワークと言えるでしょう(下図、まさに軸と極で考えることはフレームワークそのもの)。

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why

「なぜ?」という問いかけで思考の次元を上げます。「なぜ」と言う言葉は本質を問う言葉であり、単発の事象でなく、事象の関係性を表す(つまり抽象化の)ための疑問視です。また、唯一繰り返すことでより影響を強めることができます。繰り返し問うことで手段→真の目的という形で上位概念に上がることで正しい問題定義につなげることもできるし、結果→原因へと掘り下げることもできます。*3必ずしも今ある手段が正しい目的のための手段ではないし、目的自体がずれていることもあります。なぜを繰り返し問うことで、本質が何だったのか考えることができます。

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一方、Where, When, Whoなどの疑問視は問題ありきの具体化を行うための問いになります。How ~~(How much等)は解釈-範囲の1次元疑問視になりますね(その2を参照)。

メタ思考法の活用と注意点

上位概念を考えることとは抽象度の高い知的概念を考えるため、抽象度が高くなるほどシンプルになり複数意見の折衷が難しくなります。部分より全体、手段より目的、戦術より戦略といったものは折衷されたものにはならずより1つの軸を持ったシンプルなものになりますね。

また上位の目的は別の目的の手段になっているなど、多層構造になっています。あくまで上位と会の概念は相対的な位置関係になっているわけですね。

抽象化とは統計モデルか?

統計モデルを作成することとは個々の事象から関係性を見出し確率分布に当てはめて説明することです。それはまさしく抽象化して全体の法則を見いだすことに他なりません。統計モデル構築にはメカニズムを検討することを行いますが、メカニズムとはまさしく関係性や構造です。

*1:「寿司」と「工場」の抽象化レベルを合わせた回転寿司がその例らしいです。

*2:常に行動や実践は会の具体的なレベルで起きるから。具体に落とさないと「話が抽象論で現実味がない」と言われてしまったりする

*3:トヨタのなぜなぜ5回が有名