データ分析者が思う「問題解決のジレンマ」その1 〜未知と既知〜
【無知の知】
知れば知るほど、自分が知らないということを知る --アリストテレス
はじめに
データ分析者に必要な要素とはなんでしょうか?という問いに答えるなら、第一に「意思決定をするために、問題を定義し、解決まで導ける力」です。様々な分析手法やツールは定義された問題を解決まで導くための論理的な根拠づくりの手段にすぎません。ぶっちゃけ解くべき問題が間違っていたらずれた意思決定につながるだけです。
今回のレビュー「問題解決のジレンマ-イグノランスマネメント:無知の力」は、今求められている「問題定義する力」をどのように思考し、一方「問題解決する力」とのジレンマが発生することを「無知の知」を用いて解説しています。データ分析者にとって最も必要な思考を学ぶことができる一冊です。
そもそも問題を定義するとは?
問題定義は問題発見とも言えます。つまり問題とは本来、現時点ではわかっていないことです。ビジネスでは発生する様々なリスクを想定して意思決定をしていきますが、よく想定外が起こります。想定外とは「想定=既知 の外」、つまり「未知」の部分に「問題」は存在します。問題を定義するとは知られていない未知の領域に、様々な軸から課題の当たりをつけ問題として落とし込み「既知」の状態にすることです。
未知の未知、既知の未知
筆者は問題が潜む「未知」と問題として定義された「既知」という概念を考察のためさらに整理しています(下図)。
問いはあるか? | 答えはあるか? | ||
---|---|---|---|
「既知の既知」 | ある | ある | ➡︎ 解決済み |
「既知の未知」 狭義の問題解決 |
ある | ない | ➡︎「問題解決」の対象 |
「未知の未知」 広義の問題解決 |
ない | ない | ➡︎「問題発見」の対象 |
問題は「未知の未知」つまり「知らないということを知らない」状態にあるとされ、定義/発見され既知の状態となった問題の解決策を考えていかねばならない状態を「既知の未知」と整理しています。広義の問題解決にとって、この未知の未知=「問い自体の探索」が既知の未知=「解決策の探索」と異なる点だと述べています。データ分析者が解くべき問題を間違わず定義していくにはこの「未知の未知」に目を向け、「何を知らないか」ということを考えなくてはいけません。どう考えるか、が非常に重要になるわけですが、その思考法を次回以降にまとめていきます。